据付の仕事は、常にリスクの隣にある。メンバーを危険から守るためには一切妥協しない。

名工の系譜03 津﨑 浩仲

津﨑が所属する四国事業所では、原料炭から石炭火力発電所の燃料等に使用されるコークスを生産している。同地ではコークス生産に伴ってプラント内に堆積される塵芥のクリーニングと、それに伴う集塵機等の大型設備の移動や復帰が据付の主要業務となる。クレーンやジャッキ等を用い、数トン〜十数トンもの装置を安全に移動させ、時として高所で据付作業も発生することから、作業責任者には精緻な工程プランニングと要員マネジメントが求められる。

プロフィール

津﨑 浩仲

四国事業所 工事施工部 据付
1979年入社

二人の息子のうちの一人は、建設業で部下を指導する立場に。親子の会話は、ついつい技術者同士の、安全管理についての会話になってしまう。孫は四人。「週末に自宅近くの広場で遊ばせることを楽しみにしている」と相好を崩す。

INTERVIEW

据付の仕事は、常にリスクの隣にある。メンバーを危険から守るためには一切妥協しない。

「お前もやってみるか」。高校時代、岡山県の水島にある三菱化学(現・三菱ケミカル)のプラントで働く父に呼びかけられた。工場に足を踏み入れてみたときに目にしたのは、作業服に身を包んで真剣な表情で作業を行う現場の技術者の姿。とても格好良く見えた。それからおよそ40年が経った。同じように作業服に身を包み、大きな声で部下に指導する津﨑の姿がそこにあった。

一瞬の気の緩みも許されない 
コークスプラントの据付工事

「据付」とはどんな仕事なのですか?

他の工場で据付工事と言えば、設備や機器の取り付け・取り外し工事がメインとなりますが、この工場ではコークスの生産炉から排出される噴煙がもたらす煤(すす)を吸収する集塵機やダクトの、週に3回のクリーニング作業が主体となります。集塵機は巨大な設備であるため、その取り外し、分解、再設置には据付と鉄工などの大勢の技能職が関わっています。重量物である集塵機を移動させる押し出し機はレール上で動かしますが、そのボギー(台車)の車輪を取り替える作業なども、クリーニングの一環となります。

かなり大がかりなものですね。

ここの場合はコークスなので、他の化学プラントとは違いますね。工場内で大量の原料炭や生産したコークスを搬送するベルトコンベアーの取り換え工事も据付の役割ですから。足場をかけ、数十〜数百メートルのベルトを外し、架け替える作業を行うのに、大勢のスタッフが関わっています。また、こうした作業はクレーンやジャッキを使用するんですが、数トンから数十トンの装置や部材を移動させますので、人手がいくらあっても人力のみでは行えません。重機を操作する作業員、装置の取り付け・取り外しをする作業員、必要な部材や治具を運ぶ作業員など、全員が同じ目的のために意識を合わせる。重要な工程では声を掛け合いながら、作業を行います。一瞬の気の緩みも許されません。

緊張感と常に隣合わせの仕事なのでしょうか?

たしかにここぞという場面では、かなりの緊張感で仕事をしなければなりません。現場にいる全員が一つのことに集中している必要がありますね。

パソコンによるデータ管理で 
ノウハウを次の技術者へ継承する

仕事に臨むにあたっての気構えや、気をつけていることに教えて下さい。

リーダー的な立場になってからは、人に怪我をさせない、物損事故を起こさない、そのためにはどうしたら良いかを常に意識。改善意欲を持ち、工事内容を詳細に予習・復習するようにしています。とにかく安全に仕事をすることです。

そのような意識をどのようにして共有されているのですか?

まず、自分なりに職務に対して真摯に臨むことが第一。その上で、私は部下や後輩に対し、分け隔てなく自分の経験を伝え、過去の工事情報を提供しています。自分の作業ノウハウを見せ、直接指導もする。自分が得てきたスキルを、より多くの人に伝授していくことに手応えを感じるようになりましたね。

十数年ほど前からノウハウの伝承に活用しているのがパソコンです。それまでもすべての工事でポイント毎に施工方法を書き留め、写真を撮って保存資料として活用していたのですが、パソコンを使えば、いつでもすぐに過去の工事データを参照することができます。さらにフォーマットを統一しておけば、多くの工事担当者も書き込める。パソコンによる過去の工事資料の管理によって、ノウハウの共有や伝承は間違いなく進歩したとは思います。日々の業務や、こうした技能伝承への姿勢が認められたのか、キャリア25年目の2004年に社内認定資格としてマイスターの称号もいただくことができました。

何よりも作業員の安全を優先する

ご自身にとって、据付のマイスターとしてもっとも重要な要件は何だと思われますか?

プラントの工事において、工事ミスによる操業の停止や物損事故は避けなければなりませんが、それにも増して絶対にあってはならないのは、人の生死に関わる事故です。これは三菱ケミカルグループに限ったことではありませんが、化学プラントにおけるプラントメンテナンスは、高所作業からの滑落、火災、爆発などのリスクと隣り合わせにあります。とくに据付は、そのリスクの一番近くにいる。ちょっとした過失が作業員の命を奪う危険を孕んでいます。だからこそ、私はとにかく安全管理を徹底しています。これがマイスターとして求められる一番の役割だと考えています。安全に関わるルールを厳守すれば事故を未然に防げます。責任者として、工事が終わったら作業員たちを五体満足で家族の元に返さなければなりません。この当たり前のことのために、私は時として現場でメンバーたちに厳しく接するようにしています。

毎朝6時、一番集中してやり遂げる仕事が 
安全と品質を担保する

これまでのキャリアを通して心掛けてきたことについて教えてください。

20年にわたって早朝の出社を続けてきまして、毎朝6時にはオフィスにいるようにしています。始業は8時半ですが、その15分前にはラジオ体操が始まるので、実質2時間程度ですが、その2時間が一日のうちでもっとも集中できる時間なんです。

早朝、どんな仕事をされているのですか?

仕事の段取りです。だいたい3週間先までの工事計画を詳細に立て、誰に何を任せるべきか、メンバー一人ひとり思い浮かべながら、工程毎に適材適所の要員を配置しています。経験を積ませるためのローテーションも取り入れるなど、複雑なパズルのような作業であるうえ、原料炭を積んだ船の到着が台風等で遅れたりすると、計画を大幅に修正しなければならないこともあります。それでも仕事の出来は、段取りで決まる。ここだけは手を抜けません。

その他、仕事で大事にしていることはありますか?

特に新規の工事前にやるんですが、自分が詳しく知らないメンバーと一緒に仕事をする前は、通常の周知のための会議とは別に、作業員一人ひとりに個別で会って、作業内容に関するポイントを共有しています。特に安全ルールを守ように念を押しています。同じ情報でも、全員に対して一律に伝えるのと、個別に伝えるのとではニュアンスはだいぶ違ってくるうえ、人を見て伝えることができるのが一番大きなポイントだと思っています。メンバーごとの姿勢や理解度を感じながら、会話することがリスクを顕在化するきっかけになると思っています。会話は本当に大切だなと常々思います。

マイスター足らしめるのは、
無事に工事を完了させた積み重ね

理想のリーダー像を教えてください。

リーダーは場の雰囲気を作ります。現場に居るだけで作業員たちの気を引き締め、どんな難工事であろうと、プロジェクトに安心と落ち着きを生み出す存在。私もそうありたいと思っています。周到に立てる作業計画と、最善を尽くす安全管理。これらについてどこまで突き詰めたのかが、リーダーの自信につながり、それが場の雰囲気となっていくのだと思っています。数多くのチェックポイントを見落とすことなく、常にトラブルなく工事を終わらせる。その積み重ねがマイスターをカタチづくる。幸いなことに、普段から私を支えてくれている据付の二人のチーフが順調に育ってきました。彼らに自分のポジションを明け渡せる日が来ることを、心待ちにしています。

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